第2回 何が問題なのか——<連載>松代秀樹「反スターリン主義前衛党組織の労働者的本質の消失」

反スターリン主義前衛党組織の労働者的本質の消失

 

 二 何が問題なのか

 

 一九九〇年代初頭のわが労働者組織のつくりかえの闘いのゆがみは、「賃プロ魂注入主義」あるいは「「資本との対決」主義」というように規定されてきた。だが、このように規定していいのか、という疑問が、私のうちにわいてきた。
 前者にかんしては、「賃プロ魂」というのでは「反スタ魂」がぬけているではないか、というように問題にされてきた。だが、われわれがそのつくりかえの闘いをやらなければならなかった労働者組織の現実は、「反スタ魂」を喪失している、というような問題だったのだろうか。
 後者の「「資本との対決」主義」という規定は、もともとは、わが探究派の一員である佐久間置太が、かの一九九二年の三・一春闘集会の土井報告と同様の内容の報告を、当時、批判してこれにあたえたものであった。だから、これは、展開されている理論的内容にかんする規定であって、現に遂行された実践にかんする規定ではない。黒田はこの用語を採用したのだ、とおもわれる。黒田が何をさしてこのように言っているのかを読みとるのは難しいのであるが、労働者同志が職場で現にどのようにたたかったのかという実践そのものの紹介はない。
 このことと関係して、今日から考えるならば、「鬼の居ぬ間」に、すなわち黒田が入院しているあいだに土井が勝手に誤った指導をした、というように黒田がしばしばのべていることは、事実と異なるだけではなく、組織論的におかしい。組織論的に考えるならば、WOB常任メンバーたちがおかした組織指導上の誤謬については、これを、組織そのものの問題として、したがって指導部である政治組織局およびWOBそのものの問題として、われわれは反省し総括しなければならないのだからである。
 『労働運動の前進のために』の「「資本との対決」なるもの」という節では、この誤謬を誰がおかしたのかということについては、土井をさして「賃プロ魂注入主義者」というのが一度でてくるだけであって、WOB常任メンバーが、ということが、すなわち、WOBの成員が、ということがでてこない。さらに、このWOBを指導していた政治組織局がでてこない。こういうことからして、黒田がこの総括の対象としているところのわが党組織のなかには黒田その人はいないかのようなのである。
 また、われわれWOB常任メンバーの指導に従った革命的フラクションのメンバーは、「戦闘的労働者」あるいは「革命的労働者」というように規定されていて、革命的フラクションの成員であるのであれ、「組織成員」というようには規定されていない。
 さらには、□□産別の労働者出身の常任メンバーは、「左翼組合主義者」というように規定されている。「左翼組合主義的傾向をもった組織成員」というようには規定されていないのである。
 黒田は、これらすべてのメンバーたちを、すなわちわれわれを、組織成員としては認めていないかのようなのである。賃プロ魂注入主義者・戦闘的労働者・革命的労働者・左翼組合主義者たちの問題を、ひとりの革命的マルクス主義者である自分が切開している、ということであるかのようなのである。
 黒田は、労働者同志たちに呼びかけたテープで、常任メンバーたちの質が低かった、質の低い常任メンバーしか自分がつくりだしえなかったことを自己批判する、というように謝罪した。これも、違うのではないか、というように、いま、私はおもうのである。労働者組織のつくりかえの闘いのどこがどのようにおかしかったのか、ということを組織そのものの問題として総括することが必要だったのではないか、と私は考えるのである。
       (2021年11月7日     松代秀樹)