第3回 では、内容的には何が問題なのか——<連載>松代秀樹「反スターリン主義前衛党組織の労働者的本質の消失」

反スターリン主義前衛党組織の労働者的本質の消失

 

 三 では、内容的には何が問題なのか

 

 事態の発端は、▽▽産別の或る分会でうみだされた問題であった。この分会がつくりだされている職場は、▽▽産別のなかでも独自の職種の職場であり、分会員が何百人もいる大きなものであった。この産別の革命的フラクションの指導的メンバーである女性がこの分会の執行部の重要な役職を担っていた。彼女は、押しのきく男の分会役員である組合主義者と連携をとって組合運動を組織し展開していた。だが、この男は、経営体当局とつるんでいる悪質な分子であり、彼女がこの男を活用しているつもりが、実はこの男に彼女が操作されていたのだ、ということが判明した。
 ただちに、土井と足利隆志とが彼女と論議して、あぶない、という判断のもとに、彼女に職場をやめさせ彼女を他の地方に移すこととした。
 WOB常任会議で上記のことが土井と足利とから報告され、彼女は、若いころに、ジャズ喫茶か、うたごえ喫茶かに入りびたり、たばこをふかしているの好きであったのであり、ちょっとくずれたようなところのあるメンバーだ、というように、彼女の分析が提起された。
 WOB常任会議では、この問題については、その後どのように対処したのかということの報告はなされたが、そのほりさげについては、このような提起を聞き確認することで終わった。
 今日からふりかえると、このほりさげがこれ以上にはできなかったことは、大きな問題をはらむ、と私は考える。生起した問題にかんして、組合運動の組織化としてはどのようにおかしいのか、わが組織の組織としての運動への組織的とりくみとしては何が問題なのかということを反省し総括することがほとんどできていないままに、直接的な当事者である彼女の人間的資質のようなものに問題を横すべりさせた、と言えるからである。
 彼女が組合役員として、組合役員であるその男に依存するようになったのはなぜなのか、当局との交渉においてその男の力が必要だったのか、それとも、当局と分会が妥結した内容を組合員に納得させるのにその男の迫力が欠かせなかったのか、というようなことが直接的に問題となるのである。そのばあいに、では、彼女は、どのような課題をめぐって、組合役員としてどのような方針をうちだし、どのような諸活動をくりひろげていたのか、ということを点検し省察することが必要だったのである。
 私は、こういうことを聞きださないままにしてしまった。私は、WOBがこのようなかたちで問題をほりさげる力をもっていないとは認識していなかったのである。
 黒田は、労働者組織の整風運動を遂行すべきことを指示していた。このような観点から見るならば、彼女のこの問題は、組織の運動への組織的とりくみの問題としてほりさげるよりも、彼女の人間的資質の問題としてとりあげるようになり、組織内の腐敗分子のつくりなおしの問題として対処することになってしまうのである。
 このことは、黒田自身が、わがメンバーが労働組合の重要な役職を担っているという主体的条件のもとで、わが組織の担い手を創造するというわれわれの組織的目的を実現するために、そのメンバーが組合役員としてどのような組合の運動=組織方針をうちだし、それにのっとって組合役員としてどのように諸活動をくりひろげればよいのか、ということがわからなくなっていたことにもとづく、と私は考えるのである。一九九〇年代初頭に、わが労働者組織のつくりかえの闘いを、わが組織内の腐敗分子をたたきなおしつくりかえるというかたちで、わが組織が政治組織局およびWOB総体として遂行した根拠はここにある、と私は考えるのである。
       (2021年11月7日     松代秀樹)