「全労連メーデー」をのりこえよう!

 2023年5月1日(月)、全労連の中央メーデーは代々木公園で開催され、1万5000人が参加した(主催者発表)。
 会場は、5月の陽気のなか、多くの若い労働者から年金生活者や退職組合員まで、人工芝の上に腰を下ろして参加している。中には円陣を組んでトランプに興じている若者たちもいる。まるで初夏の連休の一日を楽しんでいるかのようである。全労連系の組合幹部たちは、組合員の動員によほど苦労しているのだろう。それもそのはず、「選挙第一主義」よろしく、選挙のたびごとに日本共産党の得票数を増やし議員を増やすために、労働組合員たちの尻を叩き・こき使ってきた以上、労働運動にむけての組合員たちの実践的意欲が育まれないのは当然のことではないか。
 「労働者の祭典」という触れ込みとは裏腹な、このような実態をいかに克服するか――職場から連れ立って参加した仲間にはこのように問題を提起しつつ、ともに闘っている。

 じっさい、全労連の小畑雅子議長は「コロナ禍に物価高騰が追い打ちをかけ、実質賃金の低下は11か月続いている。日本の労働者が低賃金に置かれている背景にあるのは、急速に進められた正規から非正規への置き換えや雇用の流動化を進める政策だ。引き続き、大幅な賃上げや賃金の底上げに向けた運動を進めていく」とあいさつ。
 「運動をすすめていく」といいながら、実質賃金の低下の原因を、雇用の流動化を進める政策にあるという。これでは資本によるあくどい搾取を暴きだし階級的に団結して闘うことなど決してできないのだ!彼らは、もっぱら政策転換の節穴から考えているからこのようなことを平然ということになる。その根底にあるのは、全労連の日共系幹部による共産党の「健全な資本主義」路線の労働運動へのもちこみなのである。

5月1日 全労連メーデー(代々木公園)

 

 一つ一つの職場・組合における闘いを基礎として労働者の階級的団結を強化することこそが重要なのだ。全労連メーデー・ポスターに掲げられていた「いま、声をあげよう。君となら、変えていける。」というスローガンは、全労連の日共系指導部による賃金闘争(労働運動)の歪曲を克服することなくしては実現不可能なのである。


 また来賓として登壇した共産党委員長・志位は次のように発言した。
 「岸田総理大臣は『30年ぶりの賃上げ水準だ』と自画自賛するが、大企業の賃上げは物価高騰で相殺され、多くの中小企業は賃上げをしたくてもできず、苦境に追い込まれているのが実態だ」「アベノミクスで膨れ上がった大企業の内部留保に時限的な課税を行い、10兆円の税収を中小企業の賃上げ支援にあて、最低賃金を時給1500円に引き上げたい。消費税率を5%に減税し、消費税のインボイス制度は中止に追い込もう」と。 
 彼は、労働者に向かって、大企業の内部留保に時限的な課税と消費税の減税を議会政党としては求めていくということを訴えた。だが、考えてもみよ!大企業が蓄えた膨大な「内部留保」は労働者の搾取の結果であり、資本家にしてみれば徹底した賃金抑制の賜物であり、労働組合から言えば賃金闘争の敗北の結果ではないか。「内部留保」に課税せよ、だとか、「内部留保を労働者に還元せよ」、「大企業に課税して中小企業の賃上げを」などというのは、最初から労働組合の賃金闘争は無力であると前提にしたおよそ反労働者的な倒錯ではないか!
 こんな議会政党を支えるために組合員たちを操縦しようとする全労連幹部に、腹の底から怒りがわいてきた。
 これでは労働者階級の解放にむけて前進することなど、夢のまた夢!
 職場から、闘いを通じて、労働者の団結をつくりだすことが大事なのだと改めて痛感した集会であった。
   (2023年5月3日  甲斐希実子)