「労働者協同組合法」成立に「努力」⁈――「連合」事務局長談話

 12月4日、参議院本会議において、「労働者協同組合法」(以下労協法、とする)が参議院で全会一致で可決、成立した。

 公布後、2年以内に施行することになっている。
 この労協法の成立は、コロナ危機の真っただ中に存在し、あえいでいる労働者たちにとって、どのような意味をもつのだろうか? 
 労協法には、協同組合に組合員が出資し、事業の運営に意見を反映させ、自らも事業に従事するという協同組合を認め、「多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」(『労協法 概要』、第1条関係)ことを目的とする、と謳われている。労協法では、理事・監事以外の組合員は労働契約を締結することが義務付けられ、労働者として従事し、労働関連法の適用を受けることになった。
 しかし、様々な問題が生じる可能性がある。労働者として従事する組合員は、出資者でもあり、事業の運営に意見を言うことができるいわば経営者の立場に立つわけである。それなのに、対立する労働者の立場に立って、労働法規を遵守することは可能なのであろうか? 協同組合は、資本主義社会に存在する一企業として他企業との競争にさらされるが故に、価格競争に勝ち残るため、組合員の賃金をカットしたり、労働条件の改悪をしたりせざるを得なくなる。そもそも対立する立場を労働者の中に同居させることなど不可能なのである。
 ゆえに、労働契約を結んだ労働者たちは、自らが出資したということにより、経営者の立場に立たざるをえない。そして、生き残るために、みずからの労働者的な立場を捨て去り、みずから積極的に、労働条件の改悪や賃金の切り下げ、首切りまでを行わざるを得ない状況に追い込むことになる。「持続可能で活力ある地域社会の実現に資する」労働者たちには、このような未来が待ち受けているのである。

 ところで、「連合」は、一体何をしているのか?

 傘下の組合に結集する労働者たちを、どのように守ろうとしているのか?

 12月4日に、「労協法」案の可決・成立に対して、3点にわたる事務局長談話を発表している。
 まず、1として、「労働者協同組合には、代表理事、専任理事および監事以外の組合員との間で労働契約を締結することが義務づけられ、組合員に労働関係法規が適用されることが明確化された」、と述べている。実に、よそのこととして、事務的に語っている。2においては、「同法の立法化の過程においては、組合員の労働者としての権利の保障が論点となってきた。近年、労働者協同組合と同様の原理を有する企業組合の組合員について、出資し、運営し、働き、共同で事業を行っていたことを理由として、労基法上の労働者に該当しないとする裁判所の判断が示されたこともあり、労働者協同組合の組合員の労働者性も否定されかねないとの懸念があった」、と述べ、「労協法」の成立に関して、問題があった、とはしている。そして、「一般的には労働契約を締結した組合員全員に労働関係法規が完全に適用されるとの立法者意思が示されたことは重要である」、として法の成立を評価している。このことを自分たちの努力の成果として、自負しおしだしているのである。
 しかし、「連合」の事務局長・相原は、この法が施行されたら、組合員となった労働者たちがどのような道をたどるのかについて、ひと言の危惧すら述べないのである。「連合」が膝づく・経団連のめざす「持続可能な社会」に組合員たちを貢献させようとしているのだ、といえる。そして、「連合」指導部は、コロナ危機のもとで失職や失業等にある労働者たちに、みずから「多様な就労の機会を創出」することを促す・この法に対する労働者的な怒りなどもちあわせてはいない。
 そして、最後に、「連合は、働く者の権利が守られるようにするとともに、労働者協同組合が不当に悪用されることなく、地域社会と働く者にとって意義のあるものとなるよう、意見反映に努める」、などといけしゃあしゃあと言ってのける。
 この法案の成立に「連合」指導部が力を注いだのは、〝経営者と労働者がいっしょになって企業の発展に努力する〟ことを労働組合員に指令するほどまでの「労使協議」路線に彼らが転落していることにもとづくのである。「連合」指導部は、コロナ危機で顕わになった日本国の危機をのりこえようと与野党が一致して成立させた「労協法」に依拠して、現存支配秩序を下支えしようとしているのである。

 すべての労働者は、「連合」指導部をのりこえて、政府・支配階級の諸攻撃をはねかえす闘いをつくりだすために、各職場から討論を巻き起こし、労働組合の団結を強化しよう!!
       (2020年12月6日  砂川 香仁)