われわれは内部思想闘争をどのように展開すべきなのか  第3回    対立する組織成員の双方から、諸活動の現実の認識を聞かなければならない

 2 対立する組織成員の双方から、諸活動の現実の認識を聞かなければならない

 

 上にのべてきたことは、組織の諸機関や単位組織において組織成員間の対立が発生したときには、組織指導者は、その双方から、相手への批判を聞かなければならない、ということでもある。


 組織が組織として組織的にとりくんだ組織的な諸活動の総括において、しばしば組織成員間の対立が発生した。
 組織指導者は、当該組織の組織会議に参加したのではないばあいには、対立する組織成員のどちらかから最初に報告をうけた。危機意識を強く持った組織成員の方が急いで・生起した組織的事態を組織指導者に報告しようとすることにも規定されるのであるが、組織指導者は、最初に聞いた組織成員からの報告の内容でもって、生起した事態の像を描くことがあった。このようにして自己のうちにつくりだしたもう一方の側の組織成員にたいする批判の内容にもとづいて、組織指導者が、当該の組織成員と話すにさいして彼への批判からはじめた、ということがあった。こうすることによって、批判されたその組織成員は、何について何を言われているのかわからず、言われている言葉だけは反映しても、そうしたのがおかしいと言われているのか、そうしていないじゃないかと言われているのかがわからず、いま言われているずっと以前のところで、自分のどの言動をどう認識してこういうことが言われているのかと頭をまわし、何か言われていることが深刻なので〝ちょっと待ってください〟とさえも口をはさめない、となってしまった。相手のこの態度を見て、組織指導者は、相手への自己の批判の内容を何ら疑うことなく、この内容を組織的に普遍化した。
 こうして、組織全体としても、最初に組織指導者に報告した組織成員による・生起した組織的事態の思惟的再生産の内容が、生起した組織的事態の組織的な思惟的再生産として、この内容を基礎にするかたちで組織的論議がなされた。

 

 今日からふりかえるならば、このような、一方の組織成員の側からする・事態の思惟的再生産は一面的なものであった、といわなければならない。他方の側の組織成員が、事態をどのように認識しているのか、そして彼がどのように考えているのかを、彼自身から聞きだし、組織的に明らかにしえてはいないからである。


 すべての組織成員は、組織討議の場の空気を読みそれに合わせる、というのではなく、他方の側の組織成員から事態についての再生産と考えを聞きだしえていないことに気づき、それを明らかにするための論議をおこなわなければならない。論議の流れに抗して発言することは大変であるけれども、そうしなければならない。


 ここに言う・他方の側の組織成員は、同志たちからつきつけられる・事実の思惟的再生産の内容とおのれのそれとの違いに耐えられなくなって抗弁する、ということにとどまるのではなく、他のすべての同志を相手にしてでも、生起した組織的事態にかんするおのれの認識の内容を明らかにして組織的に論議しなければならない。


 このような論議を保障することが、わが組織の生命線をなす、と私は考える。
       (2020年10月27日   松代秀樹)