国際会議「帝国主義的世界秩序の危機とプロレタリアートの対応」の報告

革命的左翼の連帯を強化し、東・西帝国主義ブロック間の軍事的抗争を打ち破ろう!

 今月15日・16日の2日間にわたり、イタリア・ミラノ市内のとある労働者クラブを会場にして、「帝国主義的世界秩序の危機とプロレタリアートの対応」(The Crisis in the Imperialist World Order and the Response of the Proletariat)を議題とする国際会議が開催された。これは、ロッタ・コムニスタ(“共産主義の闘争”)を中心とするイタリアの左翼諸団体が本年初頭に発した呼びかけに基づく会合であり、呼びかけに応えて世界各地から結集した諸組織は25団体にのぼる。本年4月に参加の招請を受けたわが革共同・探究派は、他団体と同様に事前に論文を提出した上で、ミラノ現地での会議に代表を派遣し、反スターリン主義革命的左翼としての立場を明らかにする報告を行ってきた。
 なおこの国際会議には「革マル派」もまた事前に論文を提出していたのだが、彼らは登場しなかった——否、四面楚歌となることを恐れて、登場できなかった、と言ってよい。実際、民族排外主義の立場に転落した「革マル派」を徹底的に糾弾したわれわれに対して、多くの諸団体メンバーらが握手を求めてきた。今回の会合に参加した多くの人々にとって、「革マル派」の論文が最低水準にあること・それを批判するわが探究派こそが日本の国際主義者を代表していること、これは共通の了解事項だったのである


 2日間の会合において、わが代表が強調したのは、次の二点である。
 すなわち第一に、ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵攻と、西側帝国主義諸国家によって軍事的・経済的に支えられたウクライナ・ゼレンスキー政府の反抗、この戦争を東西の帝国主義ブロック間での帝国主義戦争として認識するべきこと。「革マル派」中央官僚は、丸ごとの国民国家ウクライナ」がプーチン政権によって攻撃されているという把握のもとに、ウクライナブルジョアジープロレタリアートとが一体となって「レジスタンス」を闘っている、などと述べ、この戦争が帝国主義戦争であることを否認している。これは彼らが、〈帝国主義戦争を内乱へと転化する〉というレーニン的精神を放棄し、民族排外主義の立場へと転落したことを公然と居直るものである。国際反戦闘争の戦列を構築し、東西間の帝国主義戦争を打ち破るためには、そのような「革マル派」を弾劾してプロレタリア国際主義の立場を再確認することが、何よりも必要な条件にほかならない。
 そして第二に、ロシアによるウクライナ侵略戦争に反対する闘いをもつうじて、われわれ革命的左翼は自ら労働者階級の一員として、自己自身の職場を拠点にして階級闘争を推進するべきこと。一般にトロツキズムの伝統では、革命党が労働者階級に対して外部から介入して闘争方針を持ち込み、これをもって既存の政治力学を変化させる、という手法が一般化されてきた。だがこれでは、党が階級を外在的に牽引するというやり方から脱却できないし、労働者階級を自己解放の主体として組織し強化することもできない。そうではなく、われわれ革命的左翼は、労働者階級の外部において独立した革命的綱領を掲げるのみならず、われわれ自身が労働者階級の内部に存在して、この階級全体をプロレタリア革命に向けて前進させるべきである。プロレタリアートを一つの箱として表象した場合に、わが党員は、この箱の中に実存して、他の戦闘的労働者と力を合わせて、この箱全体を左に向けて内側から動かさなければならないのだ。そしてこの〈内在的超克〉においてこそ、われわれは既存の労働組合指導部の腐敗と対決するのみならず、労働者評議会の結成そしてプロレタリア革命の実現に向けて前進することができる。


 わが代表はこのことを、演壇上のみならず会場の内外での個別の討論において、縦横無尽に訴えてきた。
 今回の会合に来場した第四インターナショナル諸派や旧「ミリタント」諸派をはじめ、既存の国際機関が七花八裂の状態にあることは、周知の通りである。こうした中でわが探究派は、新たなインターナショナルの創造を組織的目的として設定し、ミラノでの活動を展開した。言うまでもなくこれは、今ここで「第四」を統一するだとか「第五」を創設するだとか、そういう類のことではない。そうではなく、様々に異なったイデオロギー的=組織的基礎を有する諸団体の間で、プロレタリア国際主義こそが相互協力の基盤であることを今一度確認し、その上で見解の差異について真摯な討論を行うことが重要なのである。この点で、今回の会合では、少なからぬ不一致もまた浮き彫りとなった。


 その一つが、ロッタ・コムニスタの同志たちによって提起された「民族問題」(national question)への向き合い方である。彼らが正当にも指摘したように、今日では全世界のあらゆる「民族問題」が、東あるいは西の帝国主義ブロックの利害関心から無縁ではあり得ない。レーニンの時代とは異なり、「民族自決権」支持のスローガンを提起するべき植民地革命が今われわれにとって問題なのでもない。わが探究派の代表団もまたこの主張を支持した。「民族自決権」をドグマ化するならば、結局のところナショナリズムイデオロギーを根底的に批判できないどころか、ブルジョアジーが扇動する「民族」対立に一層の油を注ぐことにしかならないのだからである。われわれはこのことを、かつてのユーゴ紛争において十分に学んだはずであるのに、しかしマンデル派をはじめとする諸君は今なお“ウクライナ人民の自決権支持”に固執している。そうした主張に立脚する諸君は結局のところ、ウクライナ労働者階級に民生品を送って生活支援を行うだとかの取り組みに注力する一方、このプロレタリア階級がゼレンスキー政権の戦時体制に組み込まれていることを明確に突き出しえないのである——それでもなお、NATOの武器供与が状況をエスカレートさせているのだと批判する点で、「革マル派」よりは遥かに上等なのであるが。


 ともあれ、こうした相違点に関して討論を一層進化させるべきこと、そのために2024年にも改めて会合を開くべきことが、参加団体の間で合意された。今回の会合のために用意された各組織の論文集は、実行委員会の手によって印刷出版される予定となっている。わが探究派は今後とも、プロレタリア国際主義の原則に立脚して、他国の諸団体との間で果敢に理論闘争を繰り広げる決意である。最後となるが、今回の会合へとわれわれを招聘してくれた実行委員会の諸君、通訳や送迎などの実務を担ってくれた同志たちに、心からのお礼を申し上げたい。
(2023年7月20日 春木良)

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国際会議における革共同(探究派)代表の発言要旨(7月15日)

 

同志諸君、

 集会実行委員会は、ヨーロッパにおける戦争の再発と東アジアにおける緊張の高まりに直面し、新たな帝国主義の蛮行に対するプロレタリアートの闘いを組織するために、この会議を招集した。まさにこの瞬間、ウクライナでは、ロシアとウクライナの両方のプロレタリアートの多くの血が流され、まさにこの瞬間、東アジアでは、日本帝国主義と新たな帝国主義国家としての中国との間で軍事的抗争が始まっている。イタリアの同志たちの呼びかけに応じてここに来たわれわれは、国際的な反戦闘争を組織し、世界労働者階級の団結を創り出すために、今日と明日の討論を実りあるものにしなければならない。われわれは、東アジアの労働者階級の未来に責任を負う反スターリン主義革命的左翼として、以下のことを指摘したい。

(1)すなわち、この会議に参加するはずだった「革マル派」は、すでにプロレタリア国際主義の立場を放棄し、ゼレンスキー政権と西側帝国主義を支持する排外主義的立場に陥っている団体である。プロレタリアートの国際的団結を創り出すためには、彼らのイデオロギーを厳しく批判することが絶対に必要である。
 彼らの文章を見てほしい。そこには驚くべきことが書かれている。
 第一に、彼ら「革マル派」は、ゼレンスキー大統領を英雄であるかのように、ウクライナ労働者階級の利益の唯一の代表者であるかのように見なしている。しかし、ウクライナにおける階級対立を否定し、ブルジョアジーの政府を支持することは、第一次世界大戦が始まるとすぐに戦争指令を支持するように立場を変えた第二インターナショナルと同じ態度である。
 なぜ「革マル派」がこのように考えるのかといえば、彼らは、ゼレンスキー政権をブルジョア国家権力と定義することも、ウクライナ侵略戦争帝国主義戦争と見なすことも拒否しているからだ。これが第二の問題である。彼ら排外主義者は、ウクライナの労働者階級はロシアのプーチン政権によって攻撃されているのだから、彼ら労働者階級がウクライナブルジョアジーと共にロシア軍と戦うべきことを主張している。「革マル派」によれば、ウクライナ軍と「郷土防衛隊」の闘いは、共にパルチザンの闘いなのだそうだ。しかし、これ以上に愚かな主張があろうか。かつてイタリアのレジスタンスは、ナチス・ドイツの支配に抗して闘ったのみならず、パドリオ政権と王党派を打倒するためにも闘ったのだ。しかしこのレジスタンスは、ブルジョアジーの政権を承認したスターリンによって阻まれたのである。レジスタンスの歴史を詳しく知っている者にとっては、ウクライナ国防軍をも「レジスタンス」と呼ぶ「革マル派」の主張がいかに反動的であるのかは明らかだろう。
 一般に、このような国際会議において、一緒に参加している他の組織を非難することが生産的な方法でないことはよく承知している。しかし、さまざまな異なる意見にもかかわらず、ここに集まったわれわれの共通の基盤がプロレタリア国際主義の立場であることを確認する限り、「革マル派」がここに来ようとしたこと自体が極めて奇妙である。ゼレンスキー政権と西側帝国主義の応援団である彼らは、直ちにこの場から立ち去るべきである——実際に、来なかったのだが。(会場、苦笑の声)

(2)民族排外主義者に反対して、われわれは次のことを明確にしておくべきだ。すなわち、ウクライナ戦争は、東西の帝国主義ブロック間の闘争が新たな次元に入ったことを告げたのである。プーチン政権がウクライナ侵攻を決定したのは、「革マル派」が言うように、彼の人格がスターリンのように暴力的だからなのではないし、いわゆる「大ロシア排外主義」のイデオロギーが戦争の原因だからでもない。2014年のユーロマイダン「革命」は、ウクライナブルジョワジーが西側諸国と同盟を結び、ロシア帝国主義と決別しようとする動きの中で起こった。これは、西側帝国主義が自らの勢力圏を東方へ拡大しようとする積極的な攻勢の結果であり、ロシア帝国主義にとっては見逃すことのできない動きであった。
 言うまでもないが、私は今回のウクライナ戦争の責任がNATO側にのみあると主張しているわけではないし、戦争狂のプーチンを擁護しているわけでもない。むしろ、旧ソ連圏を自らの経済的・軍事的支配下に置こうとしているロシアは、中国とともに東方の帝国主義ブロックを形成している。今回のウクライナ侵略戦争は、この東の帝国主義が西側に対して軍事的対抗を開始した歴史的転換点であると言っておきたい。そして、西側の帝国主義勢力は、ウクライナプロレタリアートを血祭りにあげることができる限り、東側に軍事的に対抗することをためらわない。西側帝国主義は、かつてゼレンスキーが「中立化」の考えを口にしたとき、彼の頬を叩いたのだったが、今や最新の兵器を次々と送り込み、戦争を泥沼化させている。この最新兵器には、クラスター爆弾劣化ウラン弾も含まれていることを見逃してはならない。
 この点で、ウクライナにおける戦争と東アジアにおける緊張の高まりを、相互に関連するひとつの状況として認識することが重要である。世界はすでに戦争の時代に突入している。東西の帝国主義ブロックは、今後あらゆる場所で衝突するだろう。ウクライナもその一つにすぎない。帝国主義の戦争では、どちらが軍事行動を開始するかはまったく問題ではない。このことを指摘したイタリアの同志たちを、私は高く評価したい。なぜなら、東西の帝国主義ブロックが衝突するこの時代において、平和とは休戦、敵対行為の延期にすぎないからだ。戦争を止めるには、プロレタリアート帝国主義ブロック内の自国のブルジョア政府を打ち負かす以外に方法はない。レーニンの精神を思い起こし、我々は、帝国主義戦争を内乱へと転化させなければならない。そのための力は、プロレタリアートの団結である。

(3)今問われているのは、いかにしてプロレタリアートの団結をつくり出し、いかにして革命的な力をつくり出すかである。この点で、われわれは、すでに存在している階級闘争を推し進めるだけでなく、われわれ革命的左翼の一人ひとりが、自分の職場などで、プロレタリアートの新しい団結をつくり出さなければならない。言い換えれば、労働者階級の外に革命家の集団を作り、外から労働者階級に革命戦略を提示するだけでは不十分だということを、私は強調したいのだ。われわれ革命家は同時に労働者である。他の労働者と協力し、あらゆる職場で資本家の攻勢に対抗する闘いを主導すべきである。この闘争を通じて、すべての職場に革命党の細胞を作るべきである。これは、プロレタリア権力の建設に向けた第一歩である。私がこのことを強調する理由は、プロレタリア革命を実現するためには、労働者評議会の結成のために闘う必要があるからである。
 諸君がよくご存知のように、労働者評議会は、パリ・コミューンロシア革命、1956年のハンガリー革命において、プロレタリア統一戦線の最高形態として形成されたのであり、プロレタリアート独裁の過渡的国家の基礎をなすべきものである。現代におけるプロレタリア革命の可能性を考えるとき、スターリン主義が労働者評議会の重要性を否定したこと・プロレタリア民主主義を抑圧したことを非難するだけでは十分ではない。われわれはまた、地区ソビエトを基本単位として革命を実現したものの労働者評議会との有機的結合を達成できなかったボリシェヴィキの失敗からも、教訓を引き出さなければならない。この文脈において、1919年から1920年にかけてのイタリアの工場評議会の経験を研究する必要があると考える。これらの歴史的教訓に基づいて、プロレタリアートの権力の確立に向けて前進しよう!

 プロレタリアートの団結を前進させるために、私からは以上の問題を提起する。