「たった一人で」⁇ 「たちまちのうちに」⁇

黒田寛一がたった一人で既成の共産主義運動に挑み、たちまちのうちに日本の階級闘争を大きく造りかえた……」(黒田寛一著作集 第一巻 刊行委員会著五〇七頁)を読んで、私は、この筆者にたいして、怒りと絶望と悲嘆を感じた。多くの大事なことを捨ててしまっている。忘れられている。限られた誌面とはいえ、これはないだろう!!
同志たちはどこにいる⁇ この数行に昇華するにも、なんという結果解釈!!


 革マル派を結成してから、いや結成前から、多くの文人や労働者との論議を、内部思想闘争を、粘り強く、繰り広げ、創りあげてきたのではないか。未来を決する前衛党の組織論議の質を常に問うてきたのではないか。それぞれの闘いを通じた同志たちと同志黒田寛一との営為が、筆者の論述からは微塵も感じとれない。


 刊行委員会に名乗り出たメンバーらは、いま、ここで、なにをなすべきか、場所的立場に立って、革マル派に責任を持って論議を重ねた上で、これを論述したのであろうか。同志黒田寛一亡き後、革マル派組織を指導してきた内容と立場が問われているのだ。彼らは革マル派組織を存続させていくために、組織諸成員に求めることは何か。

 今や、一四年の歳月を経て、「偉大な先駆者」「世紀の巨人」として、深紅の墓石の中に安置した同志黒田寛一を、いよいよ祭り上げ、拝む対象にしようとしている。
そのために、「たった一人で」と唯物論を超えて強調し、「たちまちのうちに」と時空をこえた存在にしようというのだ。
       (二〇二〇年一〇月一日 赤木明理)