ミラノ国際会議報告集、そして「革マル派」の虚言について一言

 先日の投稿でお知らせしたように、イタリアの同志たちによって編集・発行された小冊子が、われわれのもとに届いた。これは、今年七月にイタリア・ミラノ市内で開催された国際会議「帝国主義的世界秩序の危機とプロレタリアートの対応」の報告集である。この中には、世界各地の26団体が討論のために事前提出した論文と、会場で提案された集会アピール文が収録されている。これに関して「革マル派」中央官僚が『解放』2793号の中で嘘八百を並べ立てている。会議に出席した者として、ここで一言述べておきたい。

 その前に、前置きをひとつ。「革マル派」官僚は、ロッタ・コムニスタが第61回「国際反戦集会」に寄せたメッセージの掲載を可能な限り遅らせた。すなわち8月の集会に届けられたものを、11月になってようやく紙面に上げたのである。われわれがいち早く紹介したように、そこでイタリアの同志たちは「革マル派」が民族主義に転落していることを暴き出し、それでもなお同志的に、懇切丁寧にそのことを批判した。一見もっともらしく「共産主義者は常に必ず、虐げられた労働者・人民とともに在りともにたたかわなければならない」などと言って、実はウクライナブルジョア国家と西側の帝国主義陣営を応援しているのが、「革マル派」である。これに対してロッタ・コムニスタは、「労働者が守らなければならないのはただ自身の階級のみであり、労働者が国家の境界線を守ってはならない」のだと喝破した。「革マル派」官僚にとってこの批判はどうにも都合が悪い。だから彼らは昨年、ロッタ・コムニスタからのメッセージを「(中略)」の格好で切り刻んで文意を変えることによって対処した。だがこの隠蔽策をわれわれによって暴露されたからには、今年は同じ手口を使えない。そこで今年は、指導部内部で長いこと鳩首凝議した末、『解放』編集局の注記をそえる形でロッタ・コムニスタの文章をしぶしぶ載せることにした、というわけである。そこで書かれていることが、嘘ばかりなのだ。


 その虚言は、次の箇所につめこまれている。

 「…〈プーチンの戦争〉にかんするロッタ・コムニスタの主張のひどさは際だっている。実際、彼らは七月の十五・十六日にミラノで国際主義者の会議なるものを開催し、この会議の報告集を後日世界に配布するとしていたのであるが、彼らの主張は多くの参加者からの囂々たる批判にさらされた。彼らが起草した集会アピール案には参加者二十六団体中十団体が反対を投じ、報告集の発行もまた「こんなものを世界に配るのは恥ずかしい」との声が湧き上がったためオジャンになったという」(『解放』2793号、4面)。

「解放」2793号(2023年11月6日付)4面より

 お前たちはミラノに来てもいないくせに、よくも見たようなことを言えるな!
 官僚たちは一度も公表していないが、彼らもまたこのミラノでの会議のために論文を寄せていた。「革マル派」の文章もまた、わが探究派の論文とともに、この会議の報告集にしっかりと掲載されているのだ(われわれが執筆した英文の日本語版は、松代秀樹・春木良編『国際主義の貫徹』(プラズマ出版)に所収)。彼らは本来、国際部の誰かをミラノに送り込んで、“左翼はウクライナ国家の防衛戦争を支持せよ”とでも演説するつもりだったのではなかろうか。しかし今年六月中旬、会議報告集の初校が出た時点で、彼らはすくみ上がったにちがいない。なぜならこの報告集を見れば、ゼレンスキーの戦争を応援しているのは「革マル派」のみであること、そしてこの「革マル派」の祖国防衛主義を真正面から批判するわが探究派が参加することもまた、すぐにわかるからだ。会議の実行委員会の中心にいるロッタ・コムニスタが日本の党派間関係をよく調べた上で、「革マル派」とわが探究派との両方をあえて招待した、ということも容易に推察できただろう。われわれは、かの御用学者が来るのか、それとももうひとりの男が来るのか、イデオロギー闘争を楽しみにミラノで待ち構えていたのだが、残念なことに「革マル派」は引きこもって出てこなかった。外では論争する勇気もないくせに、彼らは日本語の『解放』となれば、ロッタ・コムニスタを「プーチンの擁護者」だとでっち上げて罵倒する(2796号)。今や公然と「労働者には祖国がある」と主張し始めた笹山登美子=ささやまとみこ=笹ヤマト巫女こと民族主義のシャーマンよ!

君ら「革マル派」のような連中のことを世間では内弁慶、いやコタツ弁慶と言うのだ。


 嘘のひとつひとつについても点検しておこう。
 ロッタ・コムニスタの主張が「多くの参加者からの囂々たる非難にさらされた」、などということはない。第四インター・マンデル派系が、「ウクライナ人民の民族自決権」を否定することはできない、と述べたものの、各組織の代表者として会場に来ていた者の全員が、ゼレンスキー政権をブルジョアジーの政府として認識し、西側帝国主義による軍事支援に反対していた。国際主義者が民族自決権の要求を掲げるべきではないというロッタ・コムニスタの主張は、真剣に検討されていたのであり、誰も「非難」などしなかった。
 「彼らが起草した集会アピール案には参加者二十六団体中十団体が反対を投じ」た、などということはない。論文集に寄稿したのは26団体で、アピール案に署名した団体は16、だから10団体が「反対」したなどと子供じみた計算をするのがそもそもおかしい。『解放』編集局のメンバーは、論文だけを寄せてミラノ現地には来場しなかった自分たちをも図々しく「26」の中に入れているようだ。しかも彼らは、このアピールが会場で挙手あるいは投票によって採択されたのだと思い描いているらしい。しかし実際には、アピール案が壇上で読み上げられた後、賛同する団体代表者はそれぞれ個別に実行委員会担当者のもとに行って、所定の用紙に署名したのである。署名しなかった組織は、アピール案に「反対」したから署名しなかったのではない。その理由は様々であり、例えば代表者だけの判断でこのようなアピール文に組織として名を連ねることはできないだとかの形式的な理由もあれば、そもそも今回の会議では意見の食い違いが大きすぎて統一見解を作り上げることに反対だ、などの意見もあった。いずれにせよ、ロッタ・コムニスタの主張に賛成できないから「反対」したという人間はいない。
 最後に、「報告集の発行もまた「こんなものを世界に配るのは恥ずかしい」との声が湧き上がったためオジャンになった」などということはない。おそらくは早稲田鶴巻町にも配達されたであろうこの報告集の存在それ自体が、「革マル派」の虚言に対する反証である。まさか笹ヤマト巫女とて、この本が「仮象実在(シャイン)」だなどと強弁する心臓は持ち合わせていまい。


 以上、全く下らない嘘八百に対して私が逐一対応してきたのは、「革マル派」のくびきの下にある下部組織成員諸君に、その指導部の実態を知ってもらうためである。読者諸兄姉におかれては、わが探究派の論文、「革マル派」の駄文、ロッタ・コムニスタおよび他の左翼諸潮流の言説を比較し検討していただきたい。報告集のPDFファイルは、実行委員会の開設したホームページ(https://www.internationalistbulletin.com)にて自分のメールアドレスを入力しダウンロードのボタンを押せば、誰でも入手できる。

(2023年12月3日 春木良)