農林中央金庫 巨額の評価損!

農林中央金庫、2020年三月期のCLO(ローン担保証券)の評価損が4,000憶円超に!
――アメリカ金融市場に日本の農林漁業者の賃金の一部を注ぐ日本の投資銀行

 農林中央金庫は、2020年3月期のCLOの評価損が4,000憶円超に上った、と発表した。奥理事長は「減損損失の計上が必要なレベルではない」「損失吸収バッファーは厚い」などと語る。つまり、この評価損4,000憶円は回収可能であり損失ではない、と強弁しているのである。これは、事態の深刻さを隠蔽しようとするものである。これは、この金融商品のコロナ危機による暴落という意味を押し隠そうとしているのである。
 農林中金保有しているCLOの総額は、何と7兆7,000億円である。(他の日本の機関投資家・銀行も巨額の投資をしている。三菱UFJグループは1兆5,000憶円、ゆうちょ銀行は1兆円だ。)この評価損4,000憶円は保有残高の5%を占めるのであり、彼らの保有しているCLO自体が市場運用資産全体の12%も占めているのである。大したことがないはずがないのだ。
 農林中金幹部は「購入しているCLOはすべてAAA格付けである。満期保有目的で優良債権だ」と弁明する。しかし、これはゴマ化しである。満期になった際に、一体どれだけ損失が膨らむのか。CLOに組み込まれている200社もの「信用力の低い」諸企業が、その時に一体どれだけ生き残っているのか、と想像すれば、背筋が凍るというものでないか。コロナ危機によって、いまアメリカでは破綻企業が続出し、GDPは1-3月期でさえ、マイナス4.8%(年率)に達しているのである。
 そもそも、このCLOとは、当初は低リスクBBやBaなどと格付けされたところの、100社から250社分のレバレッジドローンをよせ集めて証券にし、このようにして組成された証券を、――リスクが解消されたとして、――AやAAAとかに格付けする、という操作がなされたものである。これが、金融技術のなせるわざ、ということなのである。それほど信用度の高い格付けが与えられているのに、アメリカ大手金融諸機関は、なぜ自身が組成したCLOを自身が設立したSIV特別目的会社)に売り渡し、販売させるのか。自身が保有することはとにかく避ける、という行動をとるのか。債券を証券化して売却する、というのは、債務不履行に陥るリスクがあるからこそ、それを回避するために編み出された不良債権を処理するための手法なのである。これでは、まさに、金融という名のカジノではないか。
 このように、「AAA格付けで優良」というのは、まやかしなのである。アメリカの大手銀行の投資部門の人間が真実を語る、と思うほうが狂っているのである。2008年の金融危機は、サブプライムローン証券化商品(CDO)が「リスクのない金融商品」と喧伝されて、大手金融諸機関(ゴールドマンサックスやJPモルガンやらだ)の意をうけた格付け会社ムーディーズS&Pと二人三脚で高格付けされて販売されていたことを要因とする、ということを忘れたのであるか。農林中金に預けられたお金は、農林漁業労働者の賃金の一部である。これを彼ら日本のヘッジファンドにたむろする者どもが、アメリカの金融市場で運用し、みずからは金融的利得を手にし、他方ではアメリカ金融資本をこの資金でささえる、これが、彼らによるCLOの購入の階級的意味である。そして、いまコロナ危機によって、この労働者たちのなけなしの賃金の一部が、藻屑と消えたのである。これを許すことはできない。
                      (二〇二〇年七月七日  丹波 広)