トランプが敗北――新型コロナの猛威に人民をさらしたトランプに不信任

 独占資本家どもの搾取と収奪と抑圧に抗してたたかうアメリカの労働者・人民と連帯し、日本の労働者・人民は階級的に団結してたたかおう!


 8日、ペンシルベニアをおさえたバイデンは勝利宣言を行い、トランプの敗北は決定的となった。
 バイデンは、「7,400万票を獲得した。勝利するだろう」と事実上の勝利表明をおこなっていた。選挙人総取り方式のアメリカ大統領選挙ペンシルベニア州での開票が進み、当初トランプがリードしていたのを、バイデンが逆転した。この州はラストベルト(「錆びついた工業地帯」)に位置する激戦州で、前回はトランプが勝利した象徴的な州である。選挙人をここで20人獲得し、バイデンが284人になった。獲得選挙人の数では過半数の270人をこえて当選を確実にした。
 だが、トランプは悪あがきをつづけている。ペンシルベニアジョージアミシガン州など計4州で開票の差し止めや集計の監視を求める訴訟をおこした。「不正がおこなわれている。」「自分がリードしていたのに票が消えてしまった」「彼ら民主党は選挙を盗み、選挙で不正工作をおこなおうとしている」「郵便投票はとてつもない数の腐敗と詐欺にみちている」などと、根拠らしきものは何も示すこともなく、そんなものは必要ないとばかりにフェイク情報をたれながしている。選挙の直前に連邦最高裁判事に保守派のバレットの就任を承認したことにすでに示されていたように、選挙結果そのものを不正であるとして法廷闘争にもちこもうとしているのである。しかし、これは悪あがきと時間稼ぎに終わるだろう。犯罪的なことに、トランプが自らの支持者をあおりたて、ありとあらゆる排外意識をかりたてながら、自らに批判的な人々への敵対心をあおっていることである。こうして、トランプは人民を煽動することによって、トランプへの批判を強める人民への敵愾心をあおり、なんとか、法廷闘争が肯定されるようなムードを社会的に醸成できないか、とあがいているのである。
 だが、このようなあがきは許されないのである。そもそも現在新型コロナウイルスの感染が拡大し罹患者は970万人にのぼり、死者は実に24万人を超えた。そして、第2波の感染拡大が到来したととらえられているように、さらに感染の拡大が増すであろうことは間違いないのである。これは、あげてトランプ政権による人災に他ならない。「チャイナウイルス」などとシンボル操作をしようとも、アメリカでこのような最悪の死者数に達した責任がトランプ政権にあることは、トランプが次のようにほざいていたことに端的にみてとれるではないか。3月にトランプはこう言った。「コロナウイルスはインフルエンザのようなものだ。4月12日のイースターまでには新型コロナウイルスをとりのぞき、通常にもどれる。4月初めの経済活動の再開はすばらしい」、と。こうした、感染の危険性を軽くみてきたうえに、国民皆保険制度の制定など社会主義的だ、などとほざき人々が治療をすることが困難な状況に追い込んできたのがトランプにほかならない。いや、前民主党政権が制定したオバマケアという保険制度を、何としても廃止しようとうごめいてきたのが共和党トランプだったではないか。まさしく、この24万人の死者とは人災によってもたらされたのである。風邪の治療で通院するだけで治療費は5万円かかるというではないか。今回のトランプ敗北は、こうしたトランプ政権がなしてきた労働者人民への犯罪にたいして、人民が不信任をつきつけたものなのである。トランプが悪あがきしなんとか自政権への不信任をなきものにしようとするために、フェイク情報をたれながすことや、人種的、宗教的な排外的煽動を振りまくことを許すことはできないのだ。
 アメリカ支配階級は、トランプにとって替えてバイデンを、みずからを政治的に代弁する権力者の座につけた。彼らアメリカ独占ブルジョアジーは、危機に瀕するアメリカ資本主義を守るために、あくまでも労働者・人民の搾取と収奪と抑圧を強化する強硬な措置をとっていくことを意志しているのである。
 コロナ危機によって独占資本と金融支配が揺らぎかねないという危機に直面したアメリカ政府は、独占資本を救済しその支配を維持するために、国家資金を注入し、金融市場に莫大な資金を注ぎこんでのりきりをはかる、という策動を繰り広げてきた。アメリカ政府が国債の野放図な発行を決め、FRBがこの無制限買い入れをしてきた。ジャンク債、レバレッジドローンに依存してきたシェール企業など、財務悪化に陥っているあらゆる資本を救済することに血道をあげてきたのが、アメリカの政府・支配階級なのである。こうしたことをバイデンが引き続きおこなっていくことに変わりはない。これを許してはならないのだ。
 
「国民は怒りを抑えて結束しよう」というバイデンの欺瞞を許すな!

 トランプはフェイク情報を垂れ流し人種的、民族的、宗教的な排外主義をあおりたてながら自政権の支持基盤を固めようとしてきた。これにたいしてバイデンの民主党は「選挙は神聖なもの」「民主主義のリーダー国アメリカ」「国民融和」を唱えながら、みずからのトランプの共和党にたいする優位性をおしだしている。いや、トランプが今回の選挙で大方の予想に覆し、ほぼ互角のたたかいをした。じっさい、トランプ自身も得票数で約7,000万票を獲得した。このことにバイデンは危機感を高めているのである。そもそもトランプがこれほど支持を得るのはなぜか。アメリカ労働者人民が民主党共和党にかかわらず、新自由主義的な経済政策をとりながら、これをファシズム的な弱肉強食のイデオロギーで正当化してきた。強搾取と超長時間労働労働組合の破壊、社会保障制度の改悪などを強行しながら、独占資本の利害をまもるための政治経済政策をとってきたこと。その結果、国民の上位1%の高所得層が総資産の33%、下位50%の低所得層の資産がわずか2%である、という超格差社会を生み出してきたではないか。
 アメリカ政府が独占資本家階級の金融的支配のために国家資金を膨大につぎこみ、独占資本は、この金融市場において資金の投機的運用をすることによって、金融的な利得を取得しつづけてきた。そして、他方では、労働者人民は、強搾取と超長時間労働をしいられ低賃金につきおとされてきた。非正規雇用形態への転換がすすめられ、徹底的にしぼりとられ抑圧されてきた。それだけではない。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を推進しようとした民主党の政策に製造業労働者の反発をあおり、これを利用してトランプはいわゆるラストベルトの労働者を自らの支持基盤に取り込んできたのである。およそ、今生み出されている労働者階級の低賃金化や失業者の増大、これは、バイデン、トランプがその政治アメリカの労働者・人民と連帯し、政治的代弁者としてなっているアメリカの独占資本家ども・資本家階級の支配秩序を守るためにとってきた政策によって生み出されてきたのではないのか。トランプはそのために、アメリカ第一主義を鼓吹しながら、種々の排外主義をあおりたて、この人民の怒りを資本家や政治リートにむかうことを防ぎ、欺瞞的なかたちでみずからの支持基盤としてきたのである。他方のバイデンはこのトランプに比して国民融和をかかげながら、移民労働者階層や人種間、労働者諸階層の間の対立が激化することを避けながら、資本家階級とその政権の支配を安定的なものとしようとしているのである。このようなおのれの階級的な意図を貫徹するために、バイデンは「国民は怒りをおさえ、結束して、アメリカの国民のために前進しよう」などと必死でおしだしているのである。このこと自体が実に許しがたい欺瞞なのである。このようなバイデン民主党のおしだす「多様性の尊重」というような国民融和による支配体制の盤石化、立て直しのための策動につらぬかれている階級的狙いをあばきだしながら、アメリカ労働者は今こそ階級的に団結しよう。
 日本の労働者・人民は、アメリカの労働者・人民と連帯し、階級的に団結しよう。
 菅政権が「たとえどっちの候補が大統領になろうとも日米同盟は盤石であるのでなければならない。」などと、ことあるごとに強調してきた。混乱するアメリカの支配秩序への危機感を日本支配階級と政治エリートどもは表明してきたのである。しかし、われわれ日本の労働者人民はこのような菅政権をゆるさずアメリカの労働者とともに団結していこう。
        ( 二〇二〇年一一月八日 丹波広)

  編集部注

  二〇一六年、革マル派指導部は、驚くべきことに「トランプの勝利は人民の反逆」などと称して、トランプの「勝利」を喜び、「ヒラリー、ざまぁみろ!」などとうそぶいていたのであった。『コロナ危機の超克』(プラズマ出版) 佐久間論文をご参照ください。