『自然史の思想と実践的直観』服部健二著 (こぶし書房)について思う

 今年、7月こぶし書房より『自然史の思想と実践的直観』

梯明秀と田邉・西田両哲学~ 服部健二著が出版されている。

 服部健二氏は梯明秀の直弟子にあたられる。こぶし書房からは「よみがえる梯秀明の思想 日本唯物論史上もっとも独創的な思想家・梯明秀。「ヘーゲル主義の裏返し」という従来の批判をくつがえし、田邉元と西田幾多郎両哲学の批判的継承を基盤に彼の実践的直観の論理を解き明かす。」と紹介されている。
 この著書で服部氏は見事に、梯明秀の田邉・西田両哲学とそしてマルクスの「哲学」との学問的苦闘を描き出しているように思う。ファシズム下のきびしい時代の中にあって、そしてその経験を人間的土台にしつつ、唯物論哲学の分野における主体性論の先駆をなしたともいえる梯の、真摯でそして誠実な学究の姿勢に、今、感動させられている。浅学な自分ではあるが、彼の学問的遺産、学究の姿勢を一つ一つ学びたいと思い、またコロナ危機の渦中にあって、人間の変革を問わない、自己を凝視しおのれの変革を問わない、薄っぺらなイデオロギーが吹聴される今日において、いろいろな方々とこの梯明秀の遺産を共有したいと思い、紹介させていただいた。
「われわれ自身が、矛盾にみちた現代世界の変革を主体的に考察してゆく」(水木章子「同志諸君! フェデルカストロ反グローバリズム演説集」解説文より)ために!

       (2020年12月16日 岳川文久