没落するアメリカ帝国主義の戦争放火と日本帝国主義の戦争準備——排外主義的ナショナリズムを打ち砕く
イデオロギー闘争を強力に推進しよう!
(一)
今年1月3日未明、トランプ政権はベネズエラの首都・カラカスに対して150機以上の戦闘機を用いた空爆を実施し、地上部隊によりマドゥロ大統領夫妻を拉致した。その上でトランプは、アメリカがベネズエラの石油産業を支配することを、これに協力しない場合はベネズエラの現体制を打倒することを宣言した。アメリカは、マドゥロ夫妻の一挙手一投足を監視しつつ、ベネズエラがロシアから輸入していた防空システムを無力化した上で今回の攻撃を成功させたのである。当初はこの攻撃を激しく糾弾した副大統領ロドリゲスは、再度の攻撃を仄めかしたトランプに対し、一応は協力する姿勢へと転じた。中南米における「反米」政権の急先鋒を屈服させ、石油権益の確保を狙ったアメリカ帝国主義の企ては、このようにして成功を収めたかに見える。
だが、これは没落するアメリカ帝国主義の悪あがきに他ならない。トランプはすでに昨年11月、新たに発表した国家安全保障戦略の文中において「モンロー主義」への回帰について言及した上で、ベネズエラを攻撃した直後には自ら「ドンロー主義」を提唱した。すなわち、ウクライナをはじめとするヨーロッパでの戦争からは徐々に手をひくと同時に、西半球だけはせめて自らの支配下に確保しようとする新たな世界支配戦略が、それである。トランプ政権がこのようにして天然資源の確保に躍起となり、世界の再分割をかけた新たな帝国主義戦争へと突き進んでいるのは、アメリカ諸資本が中国との角逐において劣勢に立たされていることに基づく。
今回のベネズエラ攻撃そのものが、アメリカ帝国主義の没落ぶりを明らかにした。トランプは、たとえ圧倒的な軍事力でベネズエラ軍を沈黙させたのだとしても、チャベス前大統領以来の「反米」体制そのものを転覆はしなかった、否できなかったのだ。大統領代行に就任したロドリゲスは、トランプ政権への表向きの協力に基づいて実利を得て、マドゥロ政権下で破綻していた政治経済体制を固め直そうとしている。このボリバル共和国そのものをアメリカの傀儡国家へと転換させるだけの力は、アメリカには最早ない。過去の植民地支配、そして「シカゴ学派」主導の新自由主義的経済政策によって収奪されてきたのが中南米の労働者階級である。彼らは、たとえ歪曲された形ではあれ表向きは「社会主義」を看板にした「反米」政権に依然として一定の支持を与えているのであって、アメリカ帝国主義が支配を貫徹できないのは目に見えている。
また、ベネズエラから一気呵成に中国の影響力を排除するのは危険である、という判断もトランプには働いたことだろう。中国・習近平政権がレアアース輸出規制をひとたび発動するならば、アメリカが優位を守りたいハイテク産業の商品生産はたちまち危機に陥る。せいぜい、中国特使がベネズエラを訪問していたその時を狙って軍事行動を起こすことによって習近平の面子をつぶすくらいのことしかできなかったのが今のアメリカなのだ。
そうであるだけに一層、トランプは「ドンロー主義」に基づく世界の再分割をこそ「偉大なアメリカ」復活への突破口と見ている。「シェール革命」のゆえに休眠化していたアメリカ国内の既存の製油所をベネズエラ産の重質油輸入によって再び活発化させること、これのみが今回の攻撃の狙いなのではない。拘束されたマドゥロの姿を他の「反米」国家権力者に見せつけて威嚇すること、そして「反米」レジームは差し当たりそのままにした上でアメリカへ協力させ、中南米の豊富な天然資源を中国から奪回することが、アメリカ支配階級の根底的な動機である。とりわけレアアース・レアメタルの獲得をめぐる激突が、世界の再分割をめぐる闘争の一大焦点をなす。なぜなら、東および西の帝国主義陣営は、各国におけるICTの導入を通じての直接的生産過程の技術化、すなわちプロレタリアートからの一層の搾取と収奪を進めるために競い合っているのだからである。
アメリカ帝国主義が中南米に軍事介入するのは、1973年のチリ・ピノチェト政権に対する軍事クーデターの支援、1983年グレナダ侵攻そして1989年のパナマのノリエガ拉致以来のことであり、ソ連邦の崩壊後としては初めての事態である。この30年余りの国家間関係を西側の「盟主」自身が破ったことに対して、例えばドイツ首相メルツが「米国の介入の法的な評価は複雑だ」と弱々しく述べたように、ヨーロッパの国家権力者は動揺を隠さなかった。ロシアおよび日増しに台頭する中国という東側の帝国主義陣営(崩壊したスターリン主義政治経済体制から転化したものとしての性格を刻印されたそれ)に軍事的にも経済的にも対抗してきたこれまでの西側の帝国主義陣営は、すでに一個の陣営としての体をなさなくなっている。それだけに一層、ヨーロッパの帝国主義諸国家はロシア帝国主義に対して、また日本帝国主義は中国帝国主義に対して、それぞれ莫大な額の軍事費を投じて本格的な戦争準備に突き進んでいる。
このような時代の転換点にあって、各国の社会民主主義者および転向スターリニストは「国家主権の尊重」を要求することで、東西の軍事的均衡を国際法上の「平和」状態だと理想化している。こうした小ブルジョワ的平和主義をイデオロギー闘争をつうじて粉砕しつつ、われわれ革命的左翼はプロレタリア国際主義に立脚して反戦闘争を推進するのでなければならない。
(二)
日本では2月8日の衆議院選挙において、自民党と維新の会が全議席の3分の2以上を獲得した。これはすなわち、高市政権の与党が憲法改定を発議する勢力を確保したということである。高市は、外に向かっては反中国の軍事力を増強し、内に向かっては移民排斥の日本ナショナリズムを宣伝することによって、生活危機にあえぐ労働者階級の不満を押さえ込もうと目論んでいる。こうした政策の故に彼女は、「リベラル」石破に代わる強力なリーダーとして、日本ブルジョアジーからの熱い支持を得たのである。
日本初の女性総理として登場した安倍派のナショナリスト・高市早苗は1月16日、イタリア首相メローニと東京で会談し、親密ぶりを内外にアピールした。この二人は単に女性であるというだけで親密なのではなく、排外主義をイデオロギー的な心棒にしている点で、そしてまたアメリカには依存せずに独自の軍事力強化を推進するその階級的利害において、相通じている。
既に日本とイタリアは、イギリスを加えて三国共同での新たなステルス戦闘機開発に着手していた。これはイタリアにとって、ロシアに立ち向かうEUを自らが牽引していくにふさわしい規模の軍事力を構築するためであり、日本にとっては、中国に対して軍事的に対抗する上での切り札となる戦闘機を得るためである。そして、ただ単に軍事力の強化のみがこの戦闘機開発の動機なのではない。「グローバル戦闘航空プログラム」(GCAP)参加国はこの戦闘機開発を通じて、半導体産業をはじめとする自国の工業生産を強化拡大させて研究開発への投資を呼び寄せることを、また軍事研究の成果を「デュアルユース」の名において民生用としても活用し独占資本の直接的生産過程を高度に技術化することを、さらには「サプライチェーン」の共有をもって中国による資源外交に対抗することを、それぞれ企図している。この戦闘機開発は、イタリアと日本にとっては自らが一流の帝国主義国家として台頭するための一大事業に他ならない。まさしくアメリカ帝国主義が没落ぶりをあらわにしている今こそが、メローニと高市にとって自らの飛躍をかけて行動するべき好機なのである。
高市は首相に就任してすぐに、中国が台湾に対する軍事侵攻を開始した時には日本軍も軍事行動をとることを明言し、これに対して中国・習近平政権は即座に、日本を訪れる予定だった大量の中国人観光客に対して渡航中止を呼びかけたほか、レアアースの輸出規制を発表した。就任早々、横須賀基地でトランプと抱擁してヤンキー軍人からの熱い拍手を浴びた余韻に浸っていた高市は、中国との軍事的緊張が高まる際にはアメリカ帝国主義がきっと手を差し伸べてくれることを期待して、また同時に日本「有事」にあたってはアメリカが日本を防衛することを定めた日米安保条約が存在することをトランプに再認識させる意図をも込めて、国会の場で中国に対する挑発的な言動を公式に表明したのだった。しかしながら結果は、中国との緊張関係を高めないように高市がトランプから諌められるという結果に終わった。その時まさにトランプは「ドンロー主義」国家戦略の緻密化とベネズエラ攻撃の計画に専念していたのであり、高市としては期待を裏切られる格好となった。高市が今メローニとの交歓に積極的なのも、アメリカから肩すかしをくらったという、このことの教訓化に基づく。まさしくアメリカ帝国主義の歴史的没落ゆえに、日本は今後、ヨーロッパ帝国主義と軍事的にも経済的にも関係を強化していくであろう。(高市・メローニ会談においては、戦闘機開発へのドイツの参画も議題に上がった。)
東側の帝国主義陣営すなわち中国とロシアを地理的に挟みながらも日本帝国主義とヨーロッパ帝国主義とが急接近する、という今日の情勢のもとで、各国権力者は膨大な国家予算を軍事部門へ投入し、さらには徴兵制の復活を目指している。日本では、極右政党が「核武装の方が安上がりだ」と主張し、高市政権の高官がそれを選択肢として検討している旨の発言をあえてした。中国に対する敵愾心と日本民族の優越意識をあおり立てることによって、労働者階級を戦争へと駆り立てているのが極右政党および高市政権である。彼らは、日本ブルジョアジーを利するよう円安・株高状態を意図的に作り出す「責任ある積極財政」なるものを推進し、そのことによってわれわれ日本のプロレタリアートに生活物資の高騰・実質賃金引き下げを強いているのであり、これに反抗するプロレタリアートの闘争が高揚するのをあらかじめ封じ込めるためにも、天皇制ナショナリズムを注入して日本「国民」のイデオロギー的統合を図っているのだ。このような情勢のもとでわれわれ革命的左翼は、天皇制軍国主義ナショナリズムを粉砕するイデオロギー闘争を全社会的に推進するのでなければならない。
そしてこれと同じ任務が、極右勢力の台頭する各国の国際主義者にも同じく課せられているとわれわれは考える。
全世界の同志たち!既存の世界秩序が危機にある中で、プロレタリアートは貧困に突き落とされ、新たな戦争へと動員されている。われわれ国際主義者は、それぞれが所属する職場・労働組合において帝国主義戦争反対の闘いに決起すべきことを同僚たちに提起し、労働者階級を革命的階級として組織化しよう!この組織化の実践、その教訓をめぐって討論することをわれわれは全ての同志たちに呼びかける。
(2026年3月1日)


