ここまで来たか、「共産党」!

 二月二四日に、プーチンのロシアが〝ドンバス人民の庇護〟を名分とし、ウクライナの「非武装化と中立化」を要求して、ウクライナへの軍事侵略を開始して以降、いわゆる「国際社会」はロシア・プーチンの非難で覆われている。だが、プーチン・ロシアのこの蛮行を誰が・どのように弾劾するのか、こそが問われている。

 

  「国際社会」の末席をけがす代々木官僚

 

 そんななか、日本共産党は「しんぶん赤旗」紙上で連日にわたってロシア・プーチンの侵略に反対するキャンペーンをくりひろげているのであるが、そのトーンは、ロシアの「国際法違反」「国連憲章違反」の暴挙にたいして、「国際社会」の一員としてそれを非難する、というものなのである。
 しかし、考えても見よ。「国際社会」とはなにか。

 そのようなものが存在するわけではない。一九九一年のソ連邦崩壊以降に、「一超」的世界支配者となったアメリカ帝国主義が、その支配に抵抗する諸国家をやり玉にあげ、非難・攻撃する際に用いてきたのが、「国際社会」という言葉であり、新聞・テレビ等のマスコミによってこの言葉は日常的に流布されてきたのではなかったか。「国際社会」なるものは、米欧の帝国主義権力者どもがみずからの特殊的な利害に国際的に普遍的なものという装いをこらすための用語として流布してきたものなのである。プーチン・ロシアのウクライナ軍事侵略という決定的な事態を前にして、代々木官僚はこの「国際社会」の名においてロシアとたたかうことを改めて表明しているのである。米欧帝国主義に「経済制裁」を求め、それを嬉々として報道するほどに彼らは腐敗している。全世界の労働者階級の反戦平和の闘いを組織することなど、もとより彼らの眼中にはないのである。
 もちろん、〝国民的民主主義政党〟のようなものに脱皮・転進して久しい代々木共産党指導部がこのような立場を示してきたのは、当然のことではある。だが、現時点における彼らのこのような主張は、まさに記念碑的な意味をもつものといえる。

 

  〈親・米欧―反・中露〉の旗幟を鮮明にした代々木官僚

 

 彼らは「赤旗」紙上でプーチンのロシアが「ツァーのロシア帝国」や「スターリン大国主義」の延長上にあるかのように描き出すまでにいたった。かつてのロシア帝国スターリン主義ソ連邦、さらには国家資本主義のロシア――これらの区別を没却するならば、そこには〝ロシアの民族主義〟の悪のようなものしか残らない。これは彼らが〈反ロシア民族主義〉に転落したことを意味する。そしてこのことは、彼ら志位指導部が、バイデンのアメリカ帝国主義に秋波を送っていることと相即しているのである。(国内政治の諸問題では反米的主張をも残しつつ。)

 スターリン主義政治経済体制から転化した中・露の国家資本主義をわれわれは、新たな帝国主義と規定する。また、これとの対比において、米・欧・日などの帝国主義は従来型の帝国主義といってよい。二一世紀の現代世界はこの両者、「西」の旧来型帝国主義と「東」のスターリン主義から転化した帝国主義の相互の角逐、勢力圏争奪戦を基軸として激動する、という構造をあらわにしている。代々木官僚どもは、この角逐における「西」側陣営の末席に転落したのである。

 

  「東・西の帝国主義の勢力圏争奪戦反対」の革命的反戦闘争を推進しよう!

 

 プーチンのロシアのウクライナ侵略をもっぱら〈プーチンの悪〉に発するものであるかのように一極的にとらえるのはまったく現実離れした虚妄である。(この「プーチンの悪」をスターリン主義に由来するものであるかのように描き出し、もって「反スターリン主義」を装っているのが、今日の「革マル派」指導部である。今日の彼らは、帝国主義者や代々木官僚と〝五十歩百歩〟というべきほどまでに腐敗しているのである。もっとも、プーチンを「小スターリン」としたり、「現代のヒトラー」と呼んだり、その論述は支離滅裂の域に達しているのだが。)
 事実、ソ連邦の崩壊以後、かつてソ連圏を構成していた東欧諸国は、すべてワルシャワ条約機構を離脱し、アメリカ帝国主義が主導する軍事同盟=NATO北大西洋条約機構)に続々と加盟した。それらの諸国にはNATO軍の基地が次々と建設され、軍事的なロシア包囲網は着々と構築されてきたのである。そして、ウクライナまでもがNATOに加盟するならば、かつてのアメリカ帝国主義にとってのキューバのように、ロシアにとっては喉元にナイフをつきつけられた状態となる。その意味では〝窮鼠猫を噛む〟の心境でウクライナ侵略にうってでたのが、プーチンであると言っても過言ではない。たとえ米欧の帝国主義諸国家から「経済制裁」を受けようとも、習近平中国の後ろ盾さえあれば乗り切れる、という目算のもとに。


 このような現代世界情勢の構造的把握にもとづいてわれわれは、「ロシアのウクライナ侵略弾劾・東西帝国主義の勢力圏争奪戦反対」の革命的反戦闘争を推進するのでなければならない。
 世界中でまきおこっている「ロシアのウクライナ侵略反対」の運動は、痛苦なことに、「西」=「自由と民主主義」諸国権力者の補完=翼賛勢力へとからめとられている。そのような運動をのりこえ、かつての「米ソ核実験反対」の闘いの伝統と教訓を今日的に受けつぎつつ、われわれは闘うのでなければならない。
 まさにこの闘いのただ中で、われわれはプロレタリア・インターナショナリズムの再生をかちとり、国際的な労働者階級の団結をうちかためようではないか!

   (二〇二二年三月四日  椿原清孝)