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プラズマ現代叢書3
「脱炭素と『資本論』」
松代秀樹と藤川一久編著です。
今日、彼らがなぜこの書を出版するのか、その巻頭の「はじめに」を紹介します。
彼らの呼びかけは、「本書に主体的に対決されることを望む。」と結ばれています。
ぜひ、書店で手に取って下さい。
はじめに
自動車産業に端的にしめされるように、脱炭素のための技術の開発と生産体制の改編が猛スピードでおこなわれている。アメリカのテスラは、IT(情報技術)機器さながらのEV(電気自動車)を生産して急伸長した。トヨタは、EVを中国市場に投入するとともに、水素と酸素で発電してモーターを動かすFCV(燃料電池車)やさらにはガソリンの代わりに水素を燃やしてエンジンをまわす車などの技術を開発するというように、多方面に触手を伸ばしている。
ここぞとばかりに太陽光発電事業にのりだした独占資本家たちや企業経営者たちは、土石流の災害を考慮することもなく山林の木を切り倒す彼らの行為への住民たちの抗議の声と運動に直面して、太陽光パネルの設置場所を探すのに必死になっている。農業と両立させるために農地の三メートル上、空港のなかの空いた場所、駐車場の上部空間、溜池の上、ビルの壁面・窓ガラス、古い工場の屋根の上などなど。
水素がもうかると見てとった資本家もいる。オーストラリアの褐炭から、あるいは砂漠の太陽光を使った電力で、水素を生産し液体水素ないし水素化合物にして日本に運ぶ。それを運ぶために水素を燃料とするタンカーを建造する。このような事業に総合商社や化学や造船業の諸独占体はのりだしているのである。
まさにこれは脱炭素産業革命にほかならない。
いま、自動車産業の独占資本家を先頭にして、新たな技術にもとづく生産へと再編するために、これまでの生産設備を直接的に廃棄し、その設備を使う作業にたずさわってきた労働者たちを退職に追いこんでいくという大攻撃に着々とふみだしているのである。彼ら独占資本家は、自分の利益のために、下請け・孫請け企業群の零細経営者と労働者たちをバッサリと切り捨てることを目論んでいるのである。
労働者たち・勤労者たちは、このような攻撃をうち砕くために階級的に団結しよう。
この現実を分析し、労働者たちの闘いの指針を解明するための武器が、まさに、マルクスの『資本論』なのである。喧伝されている斎藤幸平らの「マルクスの再解釈」論は、『資本論』を小ブルジョア的に歪曲するものであり、マルクスのプロレタリアートの自己解放の理論とは無縁である。
マルクスを現代に蘇らせるためには同時に、マルクス主義のスターリン主義的歪曲をその根底からのりこえるためにたたかった黒田寛一の実践的・理論的・組織的苦闘を、彼の前衛党組織づくりを、継承し発展させなければならない。反スターリン主義組織の指導部を自称する者たちの今日的な変質と腐敗を暴きだし突破するために、本書に主体的に対決されることを望む。
二〇二一年八月一三日 編著者