トヨタ、中国市場に本格的に参入

 2021年4月19日、トヨタ自動車が中国上海モーターショーにスバルと共同開発したEV車(バッテリー自動車)「bZ4X」を出展した。同社は、すでに2019年6月7日には「EVの普及をめざして」という記者会見をおこなっていたのであるが、今後4年間にEV車を15車種グローバルに販売してゆく、という。他方では、国の財政支援を受けながら、トヨタ自動車は、パナソニックなどと「リチウム全固体電池」の開発を進め、そのための電池合弁会社を設立した。ルネサスエレトロニクスとの軋轢をも引き起しながら、電池サプライチェーンの構築を行っている。こうしてトヨタ自動車は、EV車を、自らが開発商品化したリチウム全固体電池を搭載して、――そして同時に電池合弁会社はその電池それ自体を商品として、――2025年をめどに販売しようとしている。
「2030年半ばにガソリン車ゼロ」を掲げた菅政権。カーボンニュートラルを掲げた、世界的な100年に1度の自動車の大変革期と言われている中で、トヨタ独占資本は、「ハイブリットガラパゴス」などと言われている、日本の自動車産業の現状を突破しようとしているのだ。
 それだけではない。
 トヨタ自動車は、中国で商用車用の燃料電池(FC)システムの現地生産に乗り出した。北京億華通科技や中国大手メーカー5社と合弁会社を設立する、というのである。新会社の社名は「華峰燃料電池」という。製品は「ミライ」のFCシステムをベースとしたものであり、年間3000基を生産する。労働者は70人でそのラインは、もちろん「乾いた雑巾からさらにしぼりとれ」という、「トヨタ生産方式」である。
 習近平は、2060年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言した(2019年9月)。これをうけて、中国政府は燃料電池車の販売補助金制度を撤廃し、技術開発に直接財政的に支援する、という方針に転換した。北京市は、「北京大興国際水素エネルギーモデル地区」を設け水素インフラ技術を開発する方針を打ち出している。
 トヨタ自動車はこのような中国政府の動向をうけて、世界最大のEV市場たる中国において、EV車の販売のみならず、商用FCV車(燃料電池自動車)の現地生産をめざしているのだ。
 トヨタ独占資本は、習近平指導部と結託して、中国の労働者を、殺人的な労働強化と強搾取をめざす「トヨタ生産方式」の餌食にしようとしているのである。
 日本をはじめ、世界の労働者は、中国の労働者階級と連帯し、トヨタ独占資本のみならず、資本家となった中国国家官僚どもの自国労働者への労働強化と強搾取に反対してゆこう。
           (2021年05月29日  田所信一)