トヨタの野望!!

 「トヨタ連合はグーグル以上の「世界制覇」を目指す」、という記事が「日経ビジネス」(5/6)に掲載された。
 この記事は、今年3月にいすゞ自動車日野自動車トヨタ自動車の3社が資本提携を含む「協業」の記者会見をおこなった、ということを受けてのこと。この時の発表では「CASEの加速」と言われた。電気自動車、燃料電池車の普及のための協力体制が直接的な目的であろう。
(C:Connected/コネクティッド、車が外につながる。A:Autonomous/オートノマウス、自動化。S:Shared/シェアリング。E:Electric/エレクトリック、電動化)
 しかし、この3社に、トヨタ自動車の子会社であるダイハツを含め、既にあるトヨタアライアンス(同盟、企業同士の提携)を形成しているマツダ、スバル、スズキも加えると、新たなトヨタアライアンスは日本の商用車の約8割を占めることになる。スケールメリットを考えると、これ自体大変なことではある。
 トラックメーカーは既にコネクティッドシステムを通じて独自に運行のための安全装置の作動検知、燃費、安全運転のデータ、位置情報サービスなどのデータを取得している、という。このコネクティッドシステムを一元化し集約するシステムを構築すれば、国内の商用車の約8割の「ビックデータ」を、トヨタアライアンスは得ることができる。そしてそのビックデータは、車の安全運行管理データに尽きるものではない。
 この巨大独占体は、運送業倉庫業などの物流合理化=経営合理化に活用することができるビックデータを持つということである。事実、この独占体は、コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーというCASE技術・サービス会社をも発足させている。トヨタは、トヨタアライアンスのもとにある、運行情報のビックデータと自動搬送システム化された倉庫、工場などを含んだ物流部門におけるAI合理化を企んでいるのであろう。自動車メーカーはそのための、AI化した電気自動車、燃料電池自動車を生産する。
 さらに、トヨタアライアンスのもとにある日本の自動車メーカー、すなわちトヨタ自動車日野自動車いすゞ自動車ダイハツマツダ、スバル、スズキの各社が持つ世界のユーザーを射程に入れてみると、世界最大のビックデータを持つことが可能になる・トヨタアライアンスという名の巨大独占体ができあがったと言える。
 このような、新たな物流合理化を、トヨタを中心とする諸独占体は、CASE化された自動車への代替えが可能である資本力のない中小の運送会社・倉庫会社を倒産や整理統合に追いやるかたちにおいて実現しようとしているのである。これらの諸独占体は、みずからの輸送・倉庫会社の労働者たちの首を切り、彼らを配置転換することを基礎にして、そして多くの中小業者やそこで働く労働者たちを路頭に放り出すことをものともせずに、産業のこうした大再編をなしとげることを企てているのである。
 トヨタ自動車の生き残りのための資本提携にもとづく、首切りを許すな!!
 労働者たちは、物流合理化の名のもとになされる解雇・配置転換を許さないために、団結してがんばろう!!
          (2021年5月9日   田所信一)