マルクス主義

斎藤幸平「疎外論」批判 第7回 斎藤によるマルクスの切断

(3)斎藤によるマルクスの切断 斎藤によればマルクスは『ドイツ・イデオロギー』において「哲学と決別」したのだという。また、『共産党宣言』は生産力至上主義であるとし、マルクスが農業問題や自然科学の研究に打ち込むことによって、「物質代謝」という…

斎藤幸平「疎外論」批判 第6回 「自然からの疎外」という斎藤のまやかし

(2)「自然からの疎外」という斎藤のまやかし 斎藤は、「疎外」の原因を「自然からの疎外」であると述べている。マルクスが疎外された労働を論じる前段で、国民経済学の諸説を引用して、「地代」に関して論述していることに、彼は注目する。内容的には、土…

斎藤幸平「疎外論」批判 第4回 『経・哲草稿』におけるマルクスの疎外論

2 『経・哲草稿』におけるマルクスの疎外論 (1)分析の出発点 「われわれは国民経済学上の事実から出発する」とマルクスは述べる。 マルクスは、疎外された労働を分析する前提として、第一草稿(1)~(3)において労賃、資本の利潤、地代というように、…

斎藤幸平「疎外論」批判 第3回 若きマルクスの実践的立場の確立

三 改竄 斎藤幸平によるマルクス「疎外論」の解釈を追ってきた。だがそれは、若きマルクスが近代資本主義の労働者の現実と対決し、思考し、学問的苦闘の上に掴み取ったものとはほど遠いものである。若きマルクスの思索・学問的苦闘を追いながら、斎藤がいか…

斎藤幸平「疎外論」批判 第2回 解釈

二 解釈 斎藤は『大洪水の前に』の冒頭「はじめに」で、次のように述べる。 「第一章で論じるように、マルクスのエコ社会主義というモチーフはすでに『パリ・ノート』(『経・哲草稿』1844)のうちに見いだすことができる。マルクスはすでに一八四四年の段階…

マルクス主義への怖れと憎悪 第8回 「マルクス労働論とファシズムイデオロギーとの同一性」という虚妄

「マルクス労働論とファシズムイデオロギーとの同一性」という虚妄 百木は論文の一項目を「物質代謝と全体主義」と題している。「最後に筆者の専門であるアーレント思想の観点からも付言しておこう」――このようにこのテーマにもっとも力をいれているのである…

マルクス主義への怖れと憎悪   第7回 『資本論』の労働論への怖れ 「傲慢な思想」という非難

三 『資本論』の労働論への怖れ 「傲慢な思想」という非難 「疎外論的な発想は、少なくとも『資本論』の時点では止揚され、より能動的な「人間による自然の合理的制御」という目標に置き換えられていたと見るべき」――このように百木は言う。つまりつぎのよう…

マルクス主義への怖れと恐怖 第6回 感性的労働の論理としての唯物弁証法

感性的労働の論理としての唯物弁証法 「一つの前提された主体としての人間の現実的な歴史」の創造の論理、これがマルクスの明らかにしようとした論理なのである。つまり、すでに人間となった人間、類的諸力を有する人間が場所において現実的にすなわち感性的…

マルクス主義への怖れと憎悪        第5回 あたらしい哲学の創造

あたらしい哲学の創造 マルクスは、なぜ、へーゲル弁証法を批判し独自の論理を新たに解明しなければならないと考えたのか。このことを百木は何ら理解できないのである。ヘーゲルの弁証法とは、対象的現実を思惟のなかで再生産し思惟の中で再興する、つまり解…

マルクス主義への怖れと憎悪

マルクス主義への怖れと憎悪 第1回 日本共産党のエコロジー的変質とその諸結果 マルクス主義への怖れと憎悪 目次マルクス主義への怖れと憎悪一 日本共産党のエコロジー的変質とその諸結果二 マルクスの疎外論の否定 ・「マルクスの疎外論的発想」とは?・実…

斎藤幸平 出演の「100分de名著 資本論」(NHK/ETV)について  マルクス主義の小ブルジョワ的改竄を許すな!(その2)

マルクス主義の小ブルジョワ的改竄を許すな!(その2) 同番組第二回は、「なぜ過労死はなくならないのか」というタイトルで放映された。 斎藤はワタミや電通の労働者の過労自死を例に近年の過労死の多発に言及し、「労働の生き血を求める吸血鬼」というマ…

マルクス主義への怖れと憎悪 第4回 マルクス疎外論のヘーゲル疎外論への還元

マルクス疎外論のヘーゲル疎外論への還元 百木は、廣松渉と同様に、マルクスの疎外という概念を、ヘーゲルの疎外という概念と同じものとみなし、本来的な人間を想定していると断罪して否定するのである。百木の論述は、廣松のそれよりももっと粗雑であるとし…

マルクス主義の怖れと憎悪 第3回 実践的立場の歪み

実践的立場の歪み 百木の錯誤はまず次のところにある。 彼は、マルクスが資本制社会を否定すべきものとしてとらえ、その根底に労働の本質形態をつかみとり、「人間と自然の物質代謝」というようにこの労働の過程を明らかにしたこと自体に恐れを抱いているの…

マルクス主義への怖れと憎悪 第2回 マルクス疎外論の否定 「マルクスの疎外論的発想」とは?

マルクス主義への怖れと憎悪 第2回 マルクス疎外論の否定 「マルクスの疎外論的発想」とは? 二 マルクスの疎外論の否定 「マルクスの疎外論的発想」とは? 百木は斎藤の主張にかんして、マルクスの疎外論を否定したい、という自分の問題意識にもとづいて図…